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「ねー、文化祭はどうするの」
紙パックにストローを挿しながら、佳奈子が僕に問う。
「1曲は何かのコピーで、もう1曲はオリジナルで良いんじゃね」
「コピーか、どっかと被らなきゃいいけど」
そこで、1つ年上の後輩である立花 理子がおずおずと手を挙げた。
「あの、私の学年でもコピーバンド組んでるところいくつかあります。」
「えっ…。じゃあもしかしたら出場するのも厳しいかもしれないの?」
うちの文化祭は、午後から有志団体によるステージパフォーマンス大会が行われる。
バンド演奏やダンス、お笑いまで様々なジャンルのパフォーマンスが繰り広げられるため、文化祭のなかの一大イベントでもある。
ただ、時間などの関係により全ての希望者が出場することは難しい。
希望者が多い場合は、いくつかの予選大会に参加して勝ち抜いていかねばいけないのだが…。
「どっかと曲が被ったらマズイよね…」
「確かに…。」
勉強やベース磨きの手を止めて、僕たちは真剣に考える。
三年生にとって最後の夏だから、成功させたい…。
「そんなん、両方オリジナルでやれば良いじゃん?」
突然、僕の背後の窓が開いて
日差しと、暑い風と、
爽やかな
香りと声がした。
「やっほー、元気してる?」
ひらひらと手を振りながら僕たちに光を与えた人こそが
「「 美弥さん!」」
僕たちのバンドの中心人物、
岡田 美弥さん である。
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