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「は」
一番最初に声を出したのは、僕だった。
皆も、ぽかんとしている。
「今、なんて…?」
「文化祭が終わったら、私はここのバンドから脱退します。」
いや、
丁寧に言われても分からない。
「なんで?」
皆の前だってことを忘れるくらい、僕は動揺していた。
「いつまでも、高校のOBがここに居座ってちゃ駄目でしょう?私もこれから就職のこと考えなきゃいけないし、どんどん資格も取っていかなきゃ」
あまりにも現実的な理由に、唖然とする。
僕以外の皆は、素直だからか美弥さんを心から慕っているからか、その言葉を受け入れようとしていた。
「むしろ…今までいてくださったことに感謝しなくちゃですよね。」
「うん。いつまでも美弥さんに甘えてちゃいけないのかも」
「でも、これからも連絡は取りましょうね!?」
「もちろんだよ!みんな…ありがとう…」
ちょっと。
ちょっと待ってよ。
なんで皆受け入れてるの?
美弥さんがいなくなるんだぞ。
リーダーがいなくなるんだぞ。
美弥さんがいなくなったら…僕たちはどうなるんだよ。
「大和先輩?」
何も言わない僕を心配してか、理子が僕に声をかけた。
一瞬我に返り、やっと出たのは、
「あー…ちょっと、お手洗い行ってきます。すいません。」
“逃げ”の言葉だった。
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