傷む彼女と、痛まない僕。

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 「お父さん。お願いだから、吉野さんの人生に不利になる事はしないで欲しい。吉野さん、誰よりも謙虚に一生懸命生きている人だから」  逃げ道も打開策も見つけられない。  だからせめて、吉野さんの心配を取り除きたかった。  「お前はまだ17歳の高校生だ。お前に出来る事はせいぜい彼女に手を貸す程度で、人を助けられる程大人じゃない。お前じゃ幼すぎて、彼女の人生を有利にするなんて事は到底出来ない」  父親の言葉に腹を立てるも、反論など出来なかった。その通りだったから。    「…お父さんとお母さんを信用しても大丈夫?」  父と母に、力になって欲しいと思った。だけど父と母に、吉野さんを裏切って欲しくないと思った。  そんな事をされたら僕は、両親を憎んでしまうだろうから。両親を嫌いになりたくはないから。
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