傷む彼女と、痛まない僕。

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 こんな時、『あぁ、やっぱり僕は病人なんだな』と思い知らされる。ちょっと傷を作っただけで大袈裟に心配されて、両親が揃ってしまう。  そして、僕が守りたいと思っている、大切な人から引き離そうとさせられてしまう。  「関わるなって…。じゃあ、痣だらけの吉野さんを見過ごせば良かったの? 吉野さんだって被害者なのに。吉野さんは僕に『助けてくれ』なんて一言も言ってない。僕が巻き添いを食わない様に『帰って。逃げて』って僕を庇おうとしてくれたよ。優しい人だよ、吉野さんは。そんな吉野さんを助けたいと思う僕は、間違っているのかな」  溜息混じりに父親に問いかける。  「救えるのか? 彼女を。お前の力で」  「……」  『お前に何が出来るんだ』と言わんばかりの父親の言い方に、言葉を詰まらせる。  吉野さんを助けたい。守りたい。想いは溢れるほどにあるというのに、自分はあまりにも無力で、その場凌ぎの援助しか出来ていない。  どうすれば良いのか、分からない。
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