傷む彼女と、痛まない僕。

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 黙り込んで俯いていると、処置室の扉が開き、治療を終えた吉野さんが出てきた。  僕の両親の姿を見つけると、一礼した後に申し訳なさそうにこちらに歩いてくる吉野さん。  僕の両親の前で足を止めると、吉野さんが勢いよく頭を下げた。  「すみません!! すみません!! お2人との約束を破って北川くんに怪我をさせてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。もう北川くんとは…「嫌だよ!!」  吉野さんが言おうとしている事が予想出来て、その先を言わせまいと遮る。  「何で!? 吉野さん、言ってくれたじゃん!! 僕と話がしたいって言ってくれてたじゃん!! 僕は嫌だ。吉野さんと関わりを持てなくなるなんて、絶対に嫌だ」  吉野さんの両肩を掴み、折り曲げたままの吉野さんの上半身を起こす。
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