傷む彼女と、痛まない僕。

37/81
251人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
 「…私といるとロクな事がないからだよ」  「あるよ!! いっぱいあるよ!! ロクな事だらけだよ!!」  吉野さんが僕から離れて行こうとするのが、どうしても嫌で、不安と焦りで日本語が滅茶苦茶になる。  「…わけ分かんない。もう、嫌なんだよ。北川くんが怪我するのを見るの」  吉野さんは僕と目を合わせてくれず、辛そうに目を伏せた。  「僕は痛くないから、そんな事はどうでもいいって言ったっしょ!?」  「そういう問題じゃない!!」  吉野さんが大声を出して、肩に置かれていた僕の手を振り払った。  「静かにしなさい。ここをどこだと思っているんだ」  そんな僕らを見兼ねた父親が仲裁に入る。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!