傷む彼女と、痛まない僕。

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 「キミがもうウチの息子とは関わらないと言っても、既に関わってしまっているよね? 警察の人から少しだけ伺ったけど、どうして息子は怪我をしなければならなかったのか、何故キミは傷だらけなのかを、私たちにも詳しく聞く権利はあるよね?」  僕と吉野さんの間に入った父が、吉野さんに『話さない』という選択肢を与えない圧力をかけた。  「……」  返答に窮し、涙目で僕の父親を見上げる吉野さん。  国にさえ救助を求めない吉野さんが、僕の父親に話したい事など何もないだろう。  まして、僕の父親は吉野さんのバイトの事を知っている。  家庭環境を知られ、バイトの事まで学校等に報告されたら、吉野さんはどうなってしまうのだろう。  吉野さんに拒否権のない、『聞く権利』とやらを、父親からどうやって奪えるだろう。  その権利を剥奪したところで、代わりに僕に何か出来るのだろうか。  どうすれば、吉野さんを安心させる事が出来るのだろう。
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