傷む彼女と、痛まない僕。

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 そんな吉野さんの肩を、母がそっと抱いた。  「吉野さん、お母さんは?」  「…仕事です」  吉野さんの返事に『そう』とだけ応えると、警察官の方に向かって歩き始める僕の母。そして、  「私共は怪しい者ではありません。マイナンバーも免許証も保険証も、持っている全ての身分証明を提示しても構いません。ですから、吉野さんを私共の家に連れ帰らせて頂きたい。吉野さんは女の子ですよ。あの子の母親の仕事が終わるまで、お風呂にも入れず、着替えもさせずに待たせる気ですか?」  僕らと一緒に帰る事を提案してくれた。
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