傷む彼女と、痛まない僕。

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 両親が警察官を説得してくれ、4人で僕の家に帰る事に。  4人で父親が運転する車に乗り込む。  助手席に母が、後部座席に吉野さんと僕が座った。  「吉野さん、何か食べたいものある? 食べられないものない? 吉野さん、ちゃんとゴハン食べれてなかったんじゃないの? 消化の良いもの作るから、しっかり食べようね」  吉野さんの様子から、吉野さんがお風呂に入れていない事を察していた母が、助手席から顔を出し、吉野さんに話しかけた。  「お気遣いありがとうございます。でも、そこまで甘えられません。大丈夫ですから」  僕の隣で、吉野さんが首を振りながら頭を下げた。  「ちょっとちょっとー。私、子どもに遠慮させる様なしょぼい大人のつもりじゃないんだけど、そう思われてるって事なの?」  吉野さんの恭しい態度に、母が白々しく拗ねた。  「そんなそんな!! そういうつもりじゃないんです。すみませんすみません」  吉野さんをリラックスさせたくて取っただろう母の言動に、緊張気味の吉野さんは気づく事なく身構えた。
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