傷む彼女と、痛まない僕。

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 「吉野さん吉野さん。母が手を差し伸べているわけなので、振り払わないで欲しいな」  『遠慮深いね、吉野さんは』と吉野さんに笑いかけると、  「……いいのかな」  他人に迷惑を掛ける事を兎に角嫌う吉野さんが、戸惑いながら僕を見つめ返した。  「いいんだよ」  それまで会話に全く入って来なかった父親が、突然声を出した。  「キミが助けて欲しいと言ったんだ。私たちに心を開いて、ある程度寄りかかってもらわないと、私たちもキミに歩み寄れないだろう? それにキミをちゃんと助けなければ、息子とキミが関わりを持ち続ける事に安心出来ない」  「お父さんの言う通り!!」  すかさず合いの手を入れる母。  「お父さんの言う通り!!」  なので、僕も被せてダメ押ししながら吉野さんの顔を覗き込むと、  「…好き嫌いもアレルギーもないです。何でもおいしく頂きます。ありがとうございます」  吉野さんが、困惑しながらも笑顔で答えた。
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