傷む彼女と、痛まない僕。

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 「え? そんな事しなくていいよ。僕、ハナからそんな事してないし。お母さんのシャンプーしか使わないし」  吉野さんが遠慮しない様、言葉を掛けると、  「どうりで減りが早いと思ってたわよ!!」  今度は僕にキレる母。  「あぁ!! やっぱり人って簡単に信用しちゃいけないわね!! でも大丈夫!! 私は吉野さんの事、裏切らないから!!」  そして母が吉野さんの手を握り、家族の揉め事に巻き込んだ。  母に困惑の笑みを返す吉野さん。  「オイオイ、どの口が言ってんだよ。こっちのセリフだよ」  吉野さんを困らせる母に、父と僕とで突っ込む。  帰宅中の車内は、母のせいで非常にうるさかった。  でも、僕らの様子を吉野さんが肩を揺らせながら笑って見ていて。  吉野さんの笑顔に安堵した。嬉しかった。  吉野さんが笑ってくれるなら、家族の醜態を晒すのも悪くないかなと思った。
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