傷む彼女と、痛まない僕。

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   家に着くと、母は早速料理を作り、僕は吉野さんの為にお風呂を沸かせた。  お風呂が沸くまでの間、吉野さんは父に、今の状態やこれからどうしたら良いのかを相談していた。  吉野さんの話に真剣に耳を傾ける父。  吉野さんが抱える問題に、父は小さく溜息を吐き、料理をしていた母は、時折手を止めてはエプロンで目頭を拭っていた。  湯沸かし器からお風呂が沸いた事を知らせる音楽が鳴ると、ひとまず父は吉野さんにお風呂に入るように促した。  『何から何まですみません。ありがとうございます』と頭を下げると、席を外す吉野さん。  吉野さんが部屋を出ると、  「ちょっと、本田に電話してくるわ」  若干顔を曇らせ、父も席を立った。  「よーくお願いしてね」  『本田』のワードに、さっきまで目を潤ませていた母が元気を取り戻し、口角を上げては軽快に料理を再開した。  てゆーか、本田って誰。
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