傷む彼女と、痛まない僕。

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 2人で仲良く母の料理を食べていると、電話をし終わった父が僕らの向かいに座った。  「吉野さん、食べながらでいいから聞いて」  父にそう言われたけれど、吉野さんは持っていた箸を置き、父の顔を見つめた。    「私の大学時代の『本田』という友人のお義姉さんに弁護士をやっている人がいてね」  父が話し出すと、何故かクスクス笑い出す母。  「…まぁ、とんでもなく気が強くてね。ただ、物凄く頭は良いし腕も確かな人で。信用を置いても問題のない人間だとは思うんだ。だから、相談してみないか?」  「…弁護士さんに相談出来るほど、まだお金貯まってないんです」  でも、吉野さんは父の話で笑う事など出来なくて、逆に顔を強張らせた。
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