傷む彼女と、痛まない僕。

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 「早ッ!!」  4人一斉にインターホンに目を向ける。  母が立ち上がり、インターホンを覗く。  「あ、お待ちしておりましたー。本田さん」  ベルを鳴らしたのは、やっぱり『本田さん』だった。  両親が本田さんを迎えに玄関に行くと、心の準備が全く出来ていないだろう吉野さんは、緊張を抑えたいのか、心臓の当たりに掌を置いていた。  そんな吉野さんの肩に『大丈夫だよ』と手を乗せると『ありがとう』と吉野さんが微笑みながら僕を見上げた。  この笑顔を守らなきゃ。誰の力を借りてでも、何をしてでも守らなきゃと、強く思った。
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