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「他人に勧めるくせに吉野さん自身は入らないしね。バスケ部」
小山くんが授業に戻り、僕の隣に座り直した吉野さんに話しかける。
「だって、部活はお金にならないけど、バイトはお給料が貰えるから。どうせ同じ時間を潰すならお金貰えないより貰えたほうが得じゃん。『時は金なり』っしょ」
吉野さんにとってバイトが大事なのは分かったが、
「『時は金なり』ってそーゆー意味じゃないよ」
「知ってるよ。だけど私は1秒でも長く働いて、1円でも多くのお金が欲しい。だから『時は金なり』」
そう言った吉野さんの表情は、始業式の日にアリを踏み潰していた時と同じで、とても鋭く、やっぱり何かに怒っていた。
「何でそんなに稼ぎたいの?」
「…まぁ、色々あるんだよ。私にも」
きっと吉野さんに怒りの理由を尋ねても、教えてくれないだろうと思いながらも聞いてみると、予想通りはぐらかされた。
これ以上聞くと嫌われそうで、吉野さんに嫌われるのは嫌で、それ以上は掘り下げない事にした。
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