序章

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ある日は暑い夏の日で、ある日は凍るような冬の日で、それからもう一度春が来て、二度めの夏休みが終わろうとしていた。 中学生よりは開放的に、大学生よりは規則的に過ごすことを強いられる高校生という存在は、自分たちが決まり決まったサイクルの中にいることを、ときにひどく拒む。 そのサイクルが拒むほどのものではないということに気付くのは、その輪を抜けてからであることが多い。 自分が思った以上にそのサイクルに依存し、安住してしたのかが明らかになっても、本人たちは案外それを認めない。 そして、サイクルから抜けた後に生きていく術が見当たらなくてもなお、その態度を変えることはない。 なぜなら彼らは、その自分の見苦しささえも、愛してしまっていたからである。 そして人によってはそれを、「青春」などと呼んで、楽しそうに振り返るのだ。 それがどんなに恥ずかしいことなのか、気づくこともなく。
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