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ー笹崎side
夏休みは、決まった時間に座っていないといけないこともないし、友人と相談しながらでも宿題ができる。それに早弁をしても怒られないし、おかしを広げたって机を近づけたっていい。最高な期間だ。
「ね、こん。夏休みって最高だね」
向かいの席で課題の冊子をぱらぱらと興味がなさそうにめくる相手に声をかける。薄いベージュのさらさらヘアーが、扉から入ってくるちょっとした風になびく。こんはそのまま持っていた大きなアンパンに豪快にかぶりついて、ゆっくり咀嚼。無表情のように見える目もとが少しほころぶ。あ、嬉しそう。
目だけを動かしてこちらを見たときには、もうそのほころびはなくなっていた。
「ササ君が課題真っ白っていうからわざわざ学校に来てるのに、なにのんきなこと言ってるの。ボクは全然最高じゃないね」
「紺谷さん、自分の課題の進捗も確認してください……」
俺と同じぐらいに真っ白な課題をなんでもないかのようにとじてもくもくとパンをほおばるこの人は、紺谷昴(こんたに すばる)。中世的な顔なのに反して性格は男気あふれる同級生。男子校であるここでは、ちょっとしたアイドルのような存在だ。……本人は、まったく気にしていないけど。
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