笹崎 新

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「ボクはいいの。あとできっとなんとかする」 「今がそのなんとかするときだよ」 はは、と笑い返すと、アーモンド色の大きな瞳がじっとこっちを見る。なんだろう。 「ササ君、夏休み前半何してたの」 「何度か言ったけど、インターハイとか合宿とか、他にも小さな大会とか、いろいろ。全部部活だけどね」 「チッ」 盛大に舌打ちをかましてから課題に向かうこん。彼は帰宅部だ。 俺たちは高校二年生だけれど、受験がどうとかそういう焦るような空気にはまだ学校自体がなっていない。中高一貫で大学付属の学校だからっていうのもあると思う。とにかく平和だ。 数学の問題をこなしていくこんの細い腕をちらりと見る。部活で鍛えられた俺の筋肉まみれの腕と比べると、片手で折れてしまうのではってほどにもろそう。色も白いし、人形みたいだ。……っていうのは、褒めすぎ? 中学の時は名前を知っているぐらいだったけど、高校に同じクラスになってからうんと仲良くなった。なんというか、気が合った。こんはふだんそっけないけれど、ちょっと省エネなだけで一緒にいて楽しい。 ……まあ、そんなことはさておき。課題の冊子のページをめくってふとこんを見ると、さっきまで解いていた問題だけ解いて机に突っ伏していた。その間もくちはもごもご動いている。
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