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もう飽きたんだろうなあ。普段の成績は俺よりだいぶん良いんだから、本気になればすぐに終わるだろうに、残念なことにこんには集中力がないらしい。パンでふくれた白い頬に「おいしい?」と声をかける。
咀嚼してのどをこくりとならしてから、こんは顔を起こさずに「まあまあ」と返してくる。こんのまあまあは、結構褒め言葉だ。美味しいんだろう。
視線をワークに戻す。夏休みの教室は俺たち以外には誰もいなくて、廊下までしんと静まり返っている。いくつかの机の上には部活用と思われる大きなカバンやら脱ぎ捨てられた制服やらが散乱している。これが夕方には汗臭い集団に回収されていくのだ。
俺たちは毎朝教室にくると、冷房がついているにも関わらずまず窓を全開にして換気をする。男子校には必須の習慣だ。
この学校の制服は、男子ばかりなんだから学ランでいいだろうと思うけど、ブレザーなのだ。男しか着ないブレザーって、なんだかそれはそれでさびしいものがある。そして、運動部員はブレザーをものの見事にしわっしわにする。男とは罪な生き物だ。
「ふう……」
ある程度進めて手を止める。分からない問題っていくら考えても解法を知らないとほんとに意味がないんだよなあ。
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