帰宅

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朝方、俺の寝室に親父がやってきて言った。 「今、お婆ちゃんが入院してる病院から電話があって、お婆ちゃんが意識不明になったって。お母さんと行ってくるから留守番頼む」 一気に眠気が吹き飛んだ俺を他所に、両親は出掛けていった。俺には出来る事がなく、何気なく自室のテレビを付ける。朝のワイドショーは芸能人の不倫がどうのと、どうでもいい内容の芸能ニュースを伝えている。全く頭に入ってこないテレビ画面をぼーっと眺めながら、俺はふと婆ちゃんの事を思い返していた。 数年前に脳卒中で倒れた婆ちゃんは、長く病院に入院していた。入院生活が長い婆ちゃんは、二年前、親父が退職金で建てた新築のこの家に住んだ事がない。もし、婆ちゃんが今のこの家に住んでいたらどうだったろうとか、昔、まだ小学生だった俺と幼稚園児の弟を連れて、一緒に桜を見に行った事とか…。 ともかく、その様な事をなんとなく思い返していた。 時計を見ると、既に昼近い時間となっており、正直あまりお腹は空いていなかったが、少し早めの昼食を食べる事にした。 リビングで独りレトルトカレーを食べていると、「バタン」と玄関のドアが開く音がした。両親が帰ってきたのかと玄関に行ったが、そこには誰もいない。 気のせいかとリビングに戻ろうとしたその時、スマートフォンに親父から着信があった。出ると、親父が言った。 「お婆ちゃんが亡くなった…」 親父との通話を終えた俺は思った。 今さっき、俺は気のせいと感じたが、それは間違いで、この家の住人はちゃんと帰ってきていたのだ。 そして、俺は言った。 「おかえり…」
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