確認作業

2/2
前へ
/2ページ
次へ
家を出る前にもう一度忘れ物がないかを確認する。 「財布入れた。携帯入れた。ハンカチ入れた。よし」 それらを鞄に入れた事を確認した私は、最後にテレビで天気予報を確認する。出先の天気には曇りマークが表示されていたので雨具を用意して鞄に詰め込む。 玄関の戸締まりをして家を出るが、火の元が心配になり、家に戻って確認をする。自分の杞憂だった事がわかり、戸締まりをして出掛けるが、今度はテレビの電源を切ったかが心配になり、再び家に戻って確認をする。それも自分の杞憂で、家を出てしばらく行ったところで、戸締まりしたかが心配になり、またまた家に戻って戸締まりを確認をする。 そのような事を三、四回繰り返してやっと安心して出掛ける事が出来た。 帰宅した私を妻が出迎え言った。 「あなた、おかえりなさい。いつもお勤めご苦労様」 気立てが良く、可愛い妻がいて、仕事も良好。全てが順風満帆、私は幸せだ。この幸せがいつまでも続けばと思う…。 自室でくつろいでいると、来客を知らせるチャイムが鳴り、対応に出た妻が慌てた様子で私の許へやってきた。 「あなた!! 警察の方が…」 「何だって!?」 玄関に行くと、スーツ姿の刑事は警察手帳を提示し、落ち着いた口調で説明する。 「実は窃盗事件の被害者宅から、あなたの指紋が検出されまして、あなたに窃盗の容疑がかかっています。署までご同行願えますか?」 指紋の拭き取り確認作業…。 私は、一番確認しなければならない作業をすっかり忘れ、自分の犯した重大なミスを後悔したが、全てが後の祭りで…。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加