ドアを開けると

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そう、あの頃の僕は自分で自分を支えていた。 漠然と自分の限界を待っていた。 客観的に自分を見て、その滑稽で的外れな努力が余計に自分の首を絞めていると気付いていても、それを途中で曲げようとはしなかったのは、つまらない自尊心と言う名の壊れた舵。 何を探して何処へ向かうのか。 若さに任せた勢いで結婚はしたものの、そこに安らぎはなく、一人娘を盾に僕は責められるのが日課になっていた。 会話もなく、居場所もない。 家庭も仕事も上手くいかない日々。 やがて離婚。 現実から逃げる事も出来ずに、ただ一日の終わりの数分だけが、眠る時だけが安息の瞬間。 このまま目覚めなければどれほど楽なんだろう。 その選択は娘の存在が打ち消す。 まだ自分を必要とする命がある。 ただ、耐えるのに疲れていた。    
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