エピローグ――――不器用な人々

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 それとは別に気になるのは、冬吾のことだ。今回は幸いにして誰も犠牲にしてしまうことはなかったが、このままの状態が続くとしたら……また同じような事態が起こらないとも限らない。また、彼の大切な人が傷つけられるようなことがあるかもしれないのだ……。もしもそうなってしまったら、自分は冬吾に対してどう振る舞えばよいのか、美夜子にはわからない。それになにより、彼自身のことが心配だ。戌井冬吾は、このままこちらの世界にいるべき人間ではない。  ……そうだ、取り返しがつかなくなってからでは遅い。冬吾を巻き込んで、この危険な世界に引き入れるきっかけを作ってしまったのは自分だ。それならば、彼が元通りの生活に戻れるようになんとかしてやるのが筋ではないのか……。前々から考えていたことではあるが、美夜子は今回さらにその思いを強めた。  しかし……どうすればいいのだろう? 冬吾がナイツに入ったのは、美夜子を助けるため彼が伏王会の構成員を殺してしまったことが原因だ。そのことを伏王会の実質的なトップである神楽(かぐら)という女に押さえられた。神楽は構成員殺害を不問とする代わりに、ナイツへ身を置くことを冬吾に約束させたのである――その約束を破れば、冬吾の妹を殺すと脅迫までして。神楽にとっては何の利益にもならない約束だ。彼女は冬吾を裏社会へ放り込んで、それを観察して面白がろうとしただけなのか、それとも何か別の目的があるのか……それはわからないが、神楽と話をつけない限りは冬吾を解放することはできない。かといって、あの神楽を交渉のテーブルにつかせるのは至難の業だろう。それに、こちらに交渉の材料は……なくは、ないが。それは美夜子自身の目的のためにも、最後の手段としておきたい。  ともかく、今は冬吾を狙って殺し屋を送り込んできた何者かを見つけ出すことが先決だ。神楽について考えるのは、その後からでも遅くはないだろう。
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