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「――禊屋さん」
横から声をかけられ、美夜子は思考を中断する。振り向くと、夕莉が立っていた。
「あっ……夕莉さん。もう戻ってたんですね」
「ああ。冬吾と少し話をしてきた。……隣りに座ってもいいかな?」
「もちろん! どーぞ!」
美夜子はベンチを少し横にずれて、そのスペースに夕莉が座った。
「本当にすまなかったね。面倒なことに巻き込んでしまって」
夕莉が言う。美夜子は思わず「それはこっちの台詞です」と口走りそうになったが、ぎりぎりで踏みとどまった。
「いえいえ、あたしは全然いーんですけど……夕莉さんこそ、大変でしたよね」
「ああ、まぁね……でも、今日は得るものも多かった」夕莉は言う。「あなたのことを知ることができたのも、その一つなんだ。禊屋さん」
「あたしですか?」
夕莉は頷くと、悪戯っぽく笑って言う。
「念のために言っておくけれど……私と冬吾は、色だの恋だのという関係では全くないよ。だから私のことは気にしないでおくれ」
「は……はいっ!?」
突然妙なことを言い出す夕莉に、美夜子は面食らってしまった。いきなり何を言い出すの、この人?
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