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「え、ええ……っと。どーしてそれをあたしに言うんでしょー……?」
「おや? 私はてっきり、二人はそういう仲なのかと思っていたのだけれど」
「そ、そういう仲って……。――あ、もしかして最初お会いしたときにあたしが食堂の中で言ったことですか? あはは、やだなー、あれは戌井君をからかうための冗談で……」
「ふふふっ……私、鼻は良いほうでね?」
夕莉は得意げに笑いながら、自分の鼻を指す。
「へ? 鼻……?」
「冬吾からあなたの香水の匂いがしたよ」
「んにゃっ……!?」
きっと、あの時だ。あのロッカーの中に二人で隠れている間に、彼の衣服に匂いが移ってしまったのだ。どうしよう……!
「あー、ははは……それはですねー……えっと……たぶん……そのぅ……な、なんでだろうー?」
こ、困りすぎるー……! その場のノリであんなことするんじゃなかったぁー……!!
「あーあー、そう狼狽えなくてもいい、いい!」
夕莉は朗らかなまでに笑いながら言う。
「私はね、君たち二人なら応援したいくらいの気持ちなんだよ?」
「だ、だからですねっ。それは誤解で――」
「まぁ、冬吾はあれでかなり鈍感なところがあるからね。伝えたいことがあるなら、ときにはズバッと言ってやる必要があるんだよ。うん、それもなるべく、急いだほうがいいかもね。あんまりもたもたしていると……」
そこで、夕莉はややトーンを落とした声になる。
「私が彼を取ってしまうかもしれない……からね?」
「えっ」
その直後、夕莉は「くくっ」と噴き出すように笑って美夜子の肩を叩く。
「あはははっ! 冗談、じょーだんだよ! そう驚いたような顔をしないでおくれよ」
「うう……」
い、いったいどこから冗談だったんだろう……。というか、なんかテンション高くない? いいことでもあったのかな……。
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