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「そんなことはないけど……どうしてそう思ったんだい?」
「んー……だって、夕莉さん。戌井君から聞いてたほどのあがり症とは、とても思えないんで。近くに居れば平気だっていう戌井君も、ここにはいませんし。その理由を考えると……ね?」
「……ああ、そういうことか」
夕莉は笑いながらベンチから立ち上がると、三歩ほど歩いてから、大きく背伸びをした。美夜子は好奇心に任せ、夕莉の背中へ語りかける。
「で、どーなんです実際のとこ? あたしの読み、当たってますか?」
「ふふっ……」
夕莉は顔だけ美夜子のほうへ振り返ると、口元の前にゆっくりと人差し指を立てて、言う。
「それもまた、機織り部屋の鶴――ってね」
【終】
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