第一部/担当編集×小説家⑦<3>

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第一部/担当編集×小説家⑦<3>

「今日はあなたに話があって、ここまで来ました」 「えっ」 「あの時の、告白の返事です」 握り締めた指先が、白くて冷たかった。 端末をポケットに入れた時に着信も通知も来ないよう電源をオフにしておいたから、今の僕には佐谷さんしか視界に入っていない。 待っている間、何度も何度も練習した。 言いたいことを頭の中に書き出して、辻褄が合うように順序立てて、余計な言葉だったり回りくどい言葉は添削をかけて短くして、そうしてまとめた文章を今度は詰まったりしないように実際に声に出して言ってみて、最後まで途切れずに言えるように数を覚えていないくらい繰り返し練習した。 思っていることの全てをきちんと伝えようとは考えていない。 大切なことは上手く言うことではなく、相手に伝えようとする行動そのもの。 何も言えないままでは何も伝えることはできないし、気持ちには気持ちで答えなければ相手は何も感じ取れない。 全てが曖昧で不確かだった。正体を確かめることが怖くて、ずっと見えないフリをして結論から逃げていた。 けれど、僕は僕の中にある正直な気持ちを話すことで佐谷さんから受けた告白に返事をする。 自分の中にあるこの感情に、今日きちんとタイトルをつける。 「この三週間ずっと考えていました」 佐谷さんに室内に入るよう促されたが、ここで良いと僕はそれに断りを入れた。
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