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遮るものは何もない。覆い隠すものも何もない。
ありのままの僕の姿で、ありのままの僕を見てもらい、ありのままの胸の内を僕は佐谷さんに聞いてもらう。
「佐谷さんの告白にYESと答えた時とNOと答えた時、どちらが自分にとってより幸せなのか真剣に考えました」
「どちらがより幸せか……?」
「そうです。……僕は、佐谷さんと一緒に居る時間が、いつもとても楽しいです。打ち合わせの時も休憩の時も、あなたと向かい合って話しをしている時がとても楽しくて、毎週佐谷さんに会うのをとても……待ち遠しく思っていました」
「え……っ、そ、そう……だったん、ですか」
「そうです、だから……YESと言うべきかNOと言うべきかなんて、本当は考えるまでもなかったんです。佐谷さんが居る時間を『楽しい』と思っている僕が、自らそれを手放すようなことが幸せだと思うなんて、そんなこと……思うわけがないんです」
「相楽さん……」
「佐谷さん、僕は、あなたと全く同じ想いを抱いているのかと言われると、そこまではまだハッキリと分かりません。けれど、僕は……佐谷さんをもう、ただの担当編集だとは思うこともできないんです。あなたがいない世界で『幸せ』だと思うことも、僕にはもう、きっとできないです」
自分の気持ちを正直に話したら、笑われるのではないかと不安だった。
あなたと仲良くなりたいと口にすると、そう思っているのはお前だけだと拒絶されそうな気がして、怖くて本音が言えなかった。
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