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『あの時と同じ告白』とは、三週間前に佐谷さんの部屋で受けた告白を再度言われるということだ。
告白の内容を思い出すと、今度は頭の先からつま先までじわじわと体温が上がっていった。自分だってまさに告白したばかりだと云うのに、自分が言うのと言われるのとでは同じ事柄でも話が違う。
「えっ、いや、あの、それは」
「良いですよね、相楽さん」
「いや、ちょっと、待ってください佐谷さ……っ」
「好きです、相楽さん」
動揺して慌てふためいている僕のことなど構うこともなかった。
佐谷さんはさっさと自分の段取りを整えると僕を離さず抱き締めたまま、耳元で再び同じ言葉を囁いた。
「もう一度言います。好きです、相楽さん。他の誰でもない、俺が好きなのはこの世でたった一人、あなただけです」
「さ……佐谷さん……っ」
「俺と付き合ってもらえませんか?」
「ぇ……っ、ぁ」
「俺と付き合ってください、相楽さん」
「……………ぅ………はい……、宜しく……お願いします……」
春の夜は空気が冷たい。
咲く花の色を鮮やかに彩る為に温かさと寒さを交互に繰り返して、蕾は少しずつ膨らみながらその花が開く瞬間を今か今かと待っている。
僕は抱き締められた佐谷さんの肩越しに、夜風に漂う桜の花びらを見た。
公園の桜は、まだ満開には早かった。
しかし今、視線の先にある桜は―――『優れた美人』という花言葉に似合うように、その枝に満開の花を咲かせていた。
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