第一部/担当編集×小説家⑥<1>

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驚きのあまりカラカラに渇いてしまった目で何度も瞬きをしながら、俺は相楽さんに返信をした。すると相楽さんからすぐにまた返事が届いて、何の躊躇もなく会う時間と場所が決まった。 想像もしていなかった。まさか、相楽さんと仕事以外で二人で会う日が来るなんて。 これまで幾度となく『食事に行きたい』とか『映画が観たい』とか思ったことはあった。けれど、知っての通り俺と相楽さんの関係は仕事以外は何もなくて、仕事ですら必要最低限の接触しか図ってこなかった。 一定の距離感を保ち、仕事相手として信頼してもらうこと。そうして彼と力を合わせて、より多くの作品を世に送り出すこと。それ以上は望んではいけないし、それが叶うことで彼と接点を持ち続けられるなら、今はこの状態を最良にすることしか考えないようにしていた。 それが、こんなカタチで殻を破る日が来るなんて。 出版社に帰っても、俺はまだ現実が受け止められず誰かに騙されているんじゃないかと疑いの気持ちでいっぱいだった。 ボーッとしている俺に気付いた編集長が丸めた雑誌で頭を軽く小突いてきたが、その日は終始地に足が付いている感覚がなく、夕飯に何を食べたのかも全く覚えていなかった。 待ち合わせは、十二時に駅前広場の時計の前で。
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