さようならノワール

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「【マリンカ】なんて、女の子みたいな名前ね……」 星空を見上げながら、苦しい息の下から彼女はぽつりと呟いた。 マリンカとは野いちごの花のことだ。 純白の五弁の花びらが、春先から初夏にかけて、 それはそれは美しく咲き乱れる。 そのかわいらしい姿から “小さい” “可憐な娘さん” という意味があった。 「荒野を覆い尽くす、純白の正義の花。 最初はわずか一輪でも、やがてその花びらはこの国のすべてを真っ白に染め上げる。 そしていつの日にか、 深紅に燃え上がるルビーのような 豊かな実りをこの国にもたらすんだ──」
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