さようならノワール

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「腐ったこの国に あなたのような “お花”は似合わない。 本当はあたし、一緒に行きたかった……。 あなたも知らないでしょう? あたしの父はゲシュペンストのボス、母はその愛人。 だからあたしの本当の名前はね……」 彼女はそのことを口に出来ぬまま、息を引き取った。 「知っていたさ。 君の本名くらい……。 好きな女の名前だ」 どこか遠くの夜空で ヘリコプターのローター音が響く。 俺は彼女をコンクリートの床に横たえると 両手を組ませ、その胸に彼女のために造ったパスポートを置いた。
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