さようならノワール

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「やはり罠か……!」 俺は赤外線スコープを覗きながら呻いた。 俺のいるビルの屋上から約170メール先のホテルの1室。 冷たい夜風が全身から吹き出す汗を蒸発させてゆく。 カーテンの開いたその部屋のソファに父が座っていた。 年老いた父はすべてを諦めたように、 痩せた横顔をこちらに向けて、ただ座っていた。 うま過ぎる話だと思ったのだ。 「組織を抜けたいなら、指定した標的を撃て」 などとあまりに単純過ぎる。 だから思ったのだ。 標的は大統領かうちの組織のボスなのか?と── 室内には父の他に監視役らしき人物が 部屋の奥のスツールに座っているのが見えた。 ズボンと革靴の足元しか見えず性別はわからない。 「くそ!ダメか!」
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