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俺は哲に背中を向け、相手の出方を見ながら尋ねた
「他のメンバーはどうした?今日はずいぶん少ないようだが?」
いつもなら40人は集まっている集会に今日は10人しかいない。
前代未聞だ。
哲「20人は遅かったのでリーダーを迎えに行きましたが、会ってないですか?」
「誰とも会ってないぞ。サボりか?」
哲「そんな筈は...」
「とにかく、俺が食い止めてる間に一人でも使えるやつ呼べ。俺でも長くはもたねえかもしれねえから急げよ。」
哲「わ、わかりました。」
哲はふらふらと立ち上がると、扉の鎖を何とかはずし、外へと消えた。
相手方は様子見を続けていたが、
一人が痺れを切らしたのか、俺にめがけて突っ込んできた。
俺はかがみこみ、そいつの脚を左の鉄パイプで殴りつけた。
そいつは派手に転び、俺の後ろ10メートルあたりの場所でゴロゴロともがいていた。
ふと視線を戻すと目の前に一人、拳を振りかざして立っていた。
俺は反射的に身を縮めた。
「やめとけ。」
その声は相手のリーダーらしき人物から放たれた様で、
俺の目の前の奴は、
殴る寸前で拳が止まっていた。
「そいつは使える。」
使えるだと?こいつら俺を一体どうしようってんだ?
とりあえず立ち上がり、鉄パイプ二本をいつでも振るえる様に構えをとった。
「まあまあ、落ち着けって。本来喧嘩しに来たんじゃねぇしな。」
どういうことだ?
俺を一体どうするつもりなんだろうか。
リーダー格の男はニヤニヤとこちらを見て行言った。
「お前に人探しをして欲しいのだ。」
…なんだと?
「俺はある女を探している。その女は元々俺達のグループの一員だった奴だ。俺達を裏切った挙句に勝手に脱退し、今は何処かに姿を消しやがった。」
「俺にその女を探せと?」
「そう言うことだ。見つけ次第ここに連絡しろ。俺は『神城 桐谷』(かみしろ きりや)だ。」
桐谷と名乗ったそいつは、周りの取り巻きと思われる連中を引き連れ出口の方へ歩き、出ていった。
(面倒な事に巻き込まれたな…)
俺はため息を吐き、その場にしゃがみ込んだ。
俺は立ち上がり、歩いて外へ向かった。
無事を伝えるためと、大事な集会に大遅刻してくれた事を詫びさせるためである。
ふと振り返ると、そこには光がまるで木漏れ日のように建物内に降り注いでいた。
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