七夕の邂逅

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ここで宿題ってどういう事なんだろう? 不思議に思いつつも私は 「お姉さんが手伝ってあげようか?」 と手を差し伸べた。けど、その子は 『無理だよ。だって……みんな、もう恋人なんだもん。』 と言って、再び首を振る。 「みんな恋人って?」 『ボク、新しい恋人を作るのが宿題なの。』 背中の服の模様と思っていた翼を大きくばたつかせ、感情の起伏を表した。 ――翼? 「あっ!」 私は思わず声を上げてしまった。 『びっくりしたぁ……。どうしたの、お姉さん。』 「ごめんなさい、ちょっと驚いたものだから。」 「そうねぇ……。 七夕祭の夜なんて、恋人だらけよね……。 狙う場所を変えた方がいいんじゃない?」 『やっぱり、そうかなぁ……』 そう言いながら、その子が顔を上げてこちらを見ると、 ふと何かを見つけたような表情をして、じーっと私の胸元を見つめる。 『お姉さん……。心の奥に……恋の種があるね……。』 「いいのよ、これは。 もう、しまった種なの。蒔くこともないし、水を上げることもないわ。」
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