緊急警報

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 どこかで見たことがある。そう思い、記憶を辿ると、頭の中で緊急速報の時になる警報が鳴った。  そうだ。この日づけは、学生時代にスマホに入れたアプリが、地震が起こると警告してきた日づけだ。  二十年も前の些細な出来事なのに、何故かはっきりあの緊急速報が脳裏に甦り、俺は同窓会の主催をしている友達に連絡を取った。  地震の話をすると、当然だが笑われた。それでも俺は食い下がり、せめて日取りを前倒しにずらせないかと聞いてみたが、そんなことはできないとあっさり言われ、嫌なら来るなと電話を切られた。  それっきり、主催の友達とは連絡が取れなくなり、他の友達からは、『バカじゃないのか』というようなメールがいくつか寄こされ、そちらとの連絡も取れなくなった。  元々最近はつき合いもなくなっていたが、旧友達に一度にのけ者にされ、いい歳をしたおっさんなのに俺はひどく落ち込んだ。それと同時に、二十年も前のアプリの誤作動を、いつまでも引きずっている自分が不甲斐なくなった。  だけど、結果として、俺の行動は正しかったと証明された。  二十年前に発令された地震の警報。  それが示した日に、特定されたあの土地で、本当に地震が起こったのだ。  震度も予測された通りで、災害の規模は酷いものだった。  電話をかけた日以来、かつての友人達とはいまだに連絡が取れないが、今それができないのは、着信を拒絶されているためだけではないだろう。  あの日鳴った緊急警報。  今はアプリも配信元も消滅してしまっているが、みんなのことは残念だけれど、俺は、自分があれのおかげて助かったことを、心から感謝している。 緊急警報…完
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