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「同じことだとおもうけれど」
「違いますよ。全然」
イサコには桃磨が考えていることを想像する方が難しかった。
それでも桃磨は真面目な表情をしている。
彼なりに真剣には考えてはいるのだろうが、イサコにとって事件は事件であった。たまたま刑事であるから刑事事件が得意なだけなのだ。イサコは足を組む。
「死体を見ないだけ民事事件のがましじゃないかしら。無冠の流星とも関わらずにすむのだし」
「無冠のことは忘れたいんです。そもそも今回のお話しにはなんの関係もないです。そうですよね」
「そうね。ともかく路線を戻すと、その被害者のことを調べて欲しいのよ」
「富子さんのことですね。分かったら連絡します」
イサコは雑談もそこそこに如月邸を出た。
赤石の顔を見たかったが仕事では仕方がない。
車を出す前にメールを入れたが、返事の気配はなかった。
桃磨ならば目的以上のものを見つけるだろうし、赤石ならばそここそこの結果を出してれる。
イサコは二人に絶対の信用を持っている。
二人とは長い付き合いなのだ。
いまでこそ疎遠となってはいたが、イサコは周囲の知らない二人を知っている。
今回の事件は警察では無理だと判断したのはイサコだった。警部にも警部補にも黙って二人に話をしに来たのである。
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