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「捕まったのは二人ですよね。木城さんと石嶋博康さん。石嶋さんが木城さんを殺そうとしたことまでは把握しています。木城さんにも何か疑いがかかっていたんですか?」
「そう。木城富子さんには盗聴疑惑があったのよ」
「盗聴疑惑ですか」
「被害者から相談されて木城さんを見張っていたら石嶋さんが木城さんを殺す現場に出くわしたのよ」
「そしてどちらも黙秘している。厄介ですね。すごく」
「拘置期間も長くは取れない。証拠もないだとお手上げ状態なのよ」
「木城富子さんの部屋は捜索しましたか」
「実家を汲まなく探したけれど盗聴できる環境ではなかったわ。それでここを頼ったのよ」
「そうですか。でも赤石さんは今日は帰られませんよ」
桃磨が人差し指を立てていた。考えている合図だった。目線も下がっている。
「事件が立て込んでいるのね」
「はい。滅茶苦茶」
桃磨が究極的に短い答えを投げかえす。探偵にも守秘義務はあるのだ。忍者のように暗躍する職業なのである。いわば縁の下の力持ちだ。深く聞き出すことはできない。
「私に協力してもらえないかな」
イサコは訊ねた。
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