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「わかった。じゃあ動物たちを最後まで見たら、ホテルにでも行こうか」
ほらね、男なんて単純。
私は恋人のように、ヒカルの長い指に自分の指を絡めた。
直後――
「でもね、俺の前でだけはそんなに無理して笑わなくったって――いいから」
怒ってるんじゃなくて、心配している顔でヒカルが私を覗きこむ。
息が止まるかと思った。
ちょっと、やめてよねそう言うの。
不意打ち、しないでよ――
今まで胸の奥に必死に築いてきた壁に、ぴきんとひびが入っちゃうじゃない。
「あはは、ヒカル何言ってんの。
暑さで景色が歪んで見えてるんじゃないの? そうだ、ここの限定ソフトクリームめっちゃ美味しいってこの前テレビで言ってたんだ。奢ってー」
壊されたのは身体だけ、そう信じておきたいんだから。
心まで、覗きこまないで。
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