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人が少ないとはいえ、人気ソフトクリームの前には10分待ちの札が。
行列があまり好きではないヒカルは面倒そうな視線を投げたけど、
「食べたい食べたいー、絶対にこれがいいんだもんっ。あの女優さんだって絶賛してたんだよ?
それに、せっかくここまできたのに。土日はもっとすごい行列なんだから、10分で食べれるならラッキーじゃん」
とごねてみたら、案外素直に並んでくれた。
でも、私のその言葉に釣られてさらにお客さんが増えて、みるみるうちに列が倍になってしまったのは計算外だったけど。
「目立つなって言われてんだろ」
ようやく手に入れた虹色のソフトクリームを味わっていたら、向かいに座ったヒカルが呆れたように言った。自分だって同じソフトクリームをおいしそうに食べてるくせに。
「怒ってんの? 私のこと嫌いなの?」
――挑発するべきじゃ、なかったんだ。
ヒカルは本当に切なそうな笑みを浮かべて私を見つめるから。胸が千切れそうになる。
「言葉で言わなきゃわかんない?
お前が想ってる以上に、お前のこと――」
「ストップ。それ以上の言葉はアノトキの熱をあげるためにとっておいて?」
そして全てを熱に浮かされたせいにしちゃいましょう。
だって、私のことを本気で好きになって、私の全てをヒカルが知りたいって言ったら困るの――
私には人には言えない秘密があるのだから。
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