15人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
+++++
『雫、今日からこの人が新しいお父さんよ』
実の父が事故で亡くなってから三年。
ふさぎ込んでいた母親がうきうきして新しい男を連れ込んできたことに、文句はなかった。
『雫ちゃん、仲良くしようね』
あの男が、母の目を盗んで私の身体を触るようになるまでは――。
元気になった母親に本当のことは言えなかった。
私のキスを、身体を、ハジメテを全部奪ったのがあの男だって――。
母に知られたくない以上、他の誰かにも言えなかった。
だから私は明るく振る舞った。にこにこ笑っておけば皆『悩みなく楽しく生きているのね』と勘違いしてくれるもの。
一方で私は近くの海から取ってきたありとあらゆるものを海産物好きなあの男の食事にそっと混ぜ続けた。そのどれが当たったのかいまだにわからないけれど、高校卒業する前の夏ようやくあの男は中毒死してくれたんだ。
そして、その全てから逃げるように都内の大学に進学したんだ。
もう、母の連れてくる男の玩具にされるなんてまっぴらだったから。
+++++
最初のコメントを投稿しよう!