一章

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でも、俺を突き動かしていた根底にあるのは目の前でハコフグになってる幼馴染みだった。 「って、ククッ...ハコフグ...笑える」 凝視すると、やはりどう見てもハコフグ。又は箱風船並にむくれてる。日常に帰ってきた安心感と愛おしさから、笑いが込み上げてきたのを我慢出来ず笑うと、 「なっ!?誰のせいだと!」 一瞬だけ恥ずかしそうにしたかと思うと、直ぐに殴りに突っかかってくる。人の鳩尾に狙いを定めて攻撃してくる幼馴染みを見ているとーーー 「きゃっ!」 無性に抱きしめたくなったのは仕方の無い事だ。訴えられないと良いな...何て考えていると 「...おかえり」 小さい声で言ってくれた。この言葉の為だけに頑張ったと言っても過言では無い!でも、今日こそは言うぞ。言いそびれたあの言葉を。 「ただいま...好きだよ」 もう既に、俺じゃない別の男の物になってる可能性は高い。だから、もしそうだったら諦めよう。そう思いあの言葉を口にしたのだが... 「...え?」 聞き返されてしまった。あれ...聞こえなかったかな?返事を聞かない事には諦めも付かないので、恥ずかしいがもう一度口にする。 「好きだ。付き合って欲しい...って、ホントに恥ずかしいなこれ」 手に触れるのですら照れてたあの頃とは違うのだけど...告白って恥ずかしいんだな。こんなに恥ずかしいなら、あの頃じゃ言えなかったな。絶対に。 「え、それってもしかして...告白?」 だと言うのに、何故わざわざ聞き返してくるのか! 「それ以外ある?」 人の腕に抱かれたままキョトンとしている幼馴染み。可愛いと思うが、この瞬間でそれをやられると少し困る。 「誰が誰に?」 「俺が!優(ユウ)に!」 恥ずかしさから顔が熱いのに、聞いてくるからヤケクソだ。 「戒(カイ)が...私に?」 「...耳掃除してやろうか?」 もう、話が通じてないのかと心配になるレベルだ。
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