洗礼

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またフロントに声をかけると「そっち、鍵開けてあるから」と言われ、指差されたドアから、フロント奥の事務室に入る。 クライアントから預かった手荷物を、フロント係は金庫の中にしまった。 フロント係は【キャサリン】と名乗った。 もちろん、日本人。 ロングの金髪、鼻ピアス、口ピアス、色んなところにピアス。 腕や足に、薔薇や蝶のタトゥー。 たぶん私より年下。 下手したら、未成年かも。 「あんた新人だよね」 「あ、はい」 「あんたも、おばさんに騙されて入らされたんだ?」 「おばさん?」 「そっちの社長」 「……あ、マヤさん」 それは、あなたより、かなり年上に違いないし、確かに、おばさんだけど、そんなハッキリ言っちゃう? 「そうですね、こんな仕事だと知ってたらやってませんね」 「敬語いらないよ、めんどいから。てか、もう電話した方がよくね?」 「え?……あっそうだ忘れてた」 私は急いで、仕事用の携帯で電話を掛けた。 「もしもし、一輝さんですか、みゆみゆです。今クライアント入りました。……はい、お願いします」 通話を切ると、キャサリンがニヤリとした顔で私を見ている。 さっきの最終ミーティングの時の、みんなの顔と同じ。 「なっ、なに?」 「今日、運搬、一輝なんだ?へぇー」 「そうだけど、なんなの?」 「べつにー」 まだニヤニヤしてる。 なんなのよ、もう。
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