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叶多が夕食の後片づけをしている間に、戒斗は玄関に置きっぱなしにしていた荷物を寝室に運んだ。
照明のスイッチを入れると、この部屋の奥にも見慣れない家具がある。
なるほど、引きとめたわけだ。
エナメル塗装の白いチェストは光が反射するほど艶出しされ、真鍮の取っ手が少しレトロっぽく、シンプルだった部屋の雰囲気をやわらかくしている。
その天板に飾られたカットグラスが目について、かつて自分が作ったガラス玉を手に取り、戒斗はかすかに笑みを浮かべた。
もとに戻すと、ボストンバッグを開いて中身を取りだした。
またすぐツアーに出なければならず、当面、片づけるのは洗濯するものだけだ。
まもなく、整理がついた頃に叶多がやってきた。
「戒斗、お風呂は溜める?」
「いや、シャワーでいい」
戒斗が振り返って答えると、叶多の顔に何かがよぎる。
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