腑抜け

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「なんて物持ちがいいんだ」 男は言った。 男の名は紅紅葉(くれない もみじ)。 この春、京都府警から神奈川県警へ異動してきた警部だ。 京都府警には配属されてから1週間足らずで異動となったので、 実質、京都府警の刑事と言い切ってしまうには、あまりに経験が足りない。 だがしかし、配属先でどう自己紹介をするかというと、 やはりそこは京都府警である。 「全然標準語なんで、気付かなかったすよー」なんて輩がいたとする。 制服上がりの新米刑事なんかは特に言いそうだ。 京都府警で1週間勤務する前は、 ややこしい話だが神奈川県警にいたのである。 むしろ、1週間で関西弁になろうものなら、 それはそれでなんかミーハーなのだ。 八つ橋はおいしかった。
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