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「13番目の方。はい、どうぞ」
天への門は狭い。
俺は享年21歳だ。
俺は上を見上げた。雲一つない青い空で、草木もない白い砂の大地が地平線まで続いている。空気もすっきりしていて、ここが天国なのだろうかと思えてしまう。
白い大地の真ん中にポツンとある白い車。
目の前には車のドアの部分だけが宙にあった。
俺はそのドアを開けて、中へ入ろうとした。
しかし、バタンという閉まる音とともに俺のズボンがドアに挟まってしまった。
「あ、運が悪いですね」
白のローブを着た金髪の男が呟いた。
髪は短髪で背が高く。目に見えない神々しいオーラを放っていた。
俺はドアの向こうに広がる。広大なうろこ雲をハトの飛び回る森林を見ながら、車のドアを開けようと努力したが、ズボンが引っ掛かってしまい。どうしても開かない。
「車のドア。壊さないで下さいね」
金髪の男は見ているだけで、手を貸そうとしない。
俺は必死にドアを開けようとしていた。
「はい。次の方」
金髪の男は無情にも次の人を呼んだ。
「ちょっと待ってください!」
俺は必死に訴えた。
ズボンを引っ張ったり、ドアを少し強引に開けようとしたりと悪戦苦闘をしていると、一人の女性が霧から現れた。
どうやら、車のドアから数メートル後ろに次々と人が霧と共に現れるようだ。
「早くしてください。まだまだ今日一日の天国へ行く人は大勢いますよ」
金髪の男は事務的に急かしてきた。
「そんなこと言ったって……」
俺は辟易し体力の続く限り車のドアと格闘することとなった。
「あの……私も手伝います」
女性は車のドアを開けようとしてくれた。
「ありがとうございます」
俺と親切な女性は白い空間に浮かぶ車のドアを開けようと、二人がかりで汗を流した。だが、俺のズボンは一向に外れず。次第に俺も女性も疲れて来た。
「はい、次の方。えー、15番目の方が来ますよ。早くしてください。日が暮れます」
金髪の男はまた次の人を呼んでしまった。
「すいませーん。車のドアがどうしても開かないんです」
親切な女性も困ったらしい。
20代に差し掛かる容姿の綺麗な人だ。
ここで、一日中こうしていると、どうなるのだろう?
次に霧から現れたのは、俺の大学時代の友人だった。
名前は斉藤 秀行(ひでゆき)。年は俺と同じ。確か人身事故でなくたった。
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