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霧から現れると俺の哀願で、車のドアを開けるのを手伝ってくれた。
「なかなか開かないや。雄介こうなったらズボンを何かで切るんだ」
秀行は俺にニヤリと笑った。
女性が辺りを見回している。
それもそのはずカッターナイフなんて、どこにもないのでは。
「すいませーん。何かズボンを切ることができるもの。ありませんか?」
金髪は首をすぐ横に振り、
「はい、次の方」
今度は派手なお婆さんがやってきた。
霧から出る時にむせて、ごほごほとしていると、金髪の男に分厚い財布から10万円を渡した。「地獄の沙汰も金次第。これで、天国のスイートルームへ送ってちょうだいな」
お婆さんは金歯を見せてにこやかに笑ったが、金髪の男は無表情のまま。また次の人を呼んだ。
「はい、次の方。後、一人で最後なのです。雄介さん早くしてください」
俺と秀行と女性。そして、お婆さんは汗を流しながら車のドアを開けようと奮闘する。これで、車のドアが開かないと、地獄に落とされるのではと俺は内心冷や汗を掻いていた。
霧から何か出て来た。
醜悪な顔の傷だらけの屈強な男が出て来た。
「雄介さん!この人は邪な者です!気を付けてください……たまにこういう事があるのです!」
金髪はそう言うと、胸の辺りで十字をきった。
「ヒィーーー!」
お婆さんは男の人相に肝を潰して悲鳴を上げた。分厚い財布を傷だらけの男に向かって投げつけた。
「わたしだけは逃がしてーー!」
お婆さんは一目散に白い空間を走り出した。
「お婆さん!!」
親切な女性はお婆さんの後を追った。
迷子になったら大変だ。
秀行と私は渾身の力を出した。
ドアが開いた。
俺は秀行だけ森林の世界へと押し込んで、お婆さんと女性の後を追うことにした。
全速力で走り出すと、屈強な男が女性とお婆さんに迫ってきていた。
足が速い。
「お婆さん!」
500メートル先に親切な女性がお婆さんに追いついていた。
俺も袂へ着くと、
「逃げるんだ!」
車のドアまで三人で急ごうとしたが、難しいことが解った。
屈強な男が、もうすぐそこにいた。
屈強な男が下卑た笑いをし、親切な女性を襲った。服を破こうとしたので、俺の中で何かがキレた。
「このヤロー! 覚悟は出来てるんだろうなー!」
俺は中学時代から柔道をしていた。拳に力を入れると、女性とお婆さんを庇うために戦いを挑んだ。
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