カミ☆まじっ！～cheat magic～

１・マジックショー演目

【1】

　不安だ。

　マジックショーの前は何時も不安だけど、今回のマジックは何時にも増してかなり不安で仕方ない。

マジシャンの神埼匠馬が今回披露するマジックは“死者蘇生マジック”それも“昨今失踪した女子高生”で警察でも捜査を難航させているというのに。

こんなことはっきり言って被害者の家族を冒涜するような行為だし、全国ネットのテレビで放送するよいなものじゃない。不謹慎で非常識だと私は思う。

　特に人生のどん底に落とされた今は。

　神埼くんは幼い頃は父親の転勤が多かった為、友人が少なく、読書が唯一の友人だった。中でもミステリー小説に登場するマジックに魅了さてマジシャンを志す。

独学でマジックを習得し、それから広島の文化ホールやグリーンアリーナ、さいたまスーパーアリーナ、東京ドームなどでマジックを披露するうち、一念発起しアポロシアターを夢見て渡米した。

マジック自体は巧くいったんだけど、却って如何様疑惑やインチキ疑惑をかけられ、初公演のアポロシアターでは大ブーイングを受ける。YouTube動画やTwitter、ネットの掲示板にこのことは大々的に取り上げられ、

　マジシャンの面汚し。

　日本人の恥。

　なんて散々、誹謗中傷や罵詈雑言が浴びせられ、街中では白い目で見られるようになり、神埼くんはすっかりマジックをやらなくなった。

ほとぼりが冷めた頃、テレビ局からマジックをもう一度日してほしいと電話が掛かって来た。失踪事件のこともテレビ局側が付けて来た条件だけど、話題になった人物を弄って試聴率を荒稼ぎしようという魂胆が見え見えだ。

然し、神埼くんにはもうスタッフを雇うお金も、スタジオへの交通費もない。今時スマホも持ってないし、スーツも着ないほどのお金もないからしょうがないが、経費が殆ど私のポケットマネーなのはなんとかしたい。

　私はただのバニーガールだよ。

　「光ちゃん、始めてくれ」

　イヤホンから神埼くんの声が聞こえる。彼は登場演出の為に棺桶の中から小型マイクで私に指示を出している。