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「ですが皆様。アマンダさんが探した場所にいないのには理由があるんです。それはイッツ・ア・ロングストーリー(話せば長くなります)ですが、単刀直入に言いますと、アマンダさんは今ここに来ているんです」
神埼くんは「では皆様、拍手でお迎え下さい」と棺桶を再び開き、中からアマンダさんそっくりの女性の手を引いた。
彼女と同じブロンドに、通っていた高校の制服に特殊メイク。両手の手首にはロープで縛られた跡。右の頬には殴打された痣。胸部には刃物で刺されて出血したように血糊を塗ってある。
路上の観客はアマンダさんの登場にざわつき始めた。
ここまでリアリティを追求する必要があるのか判らないけれど、女優さんには、アマンダさんは蘇ったばかりで、肉体のコントロールが不充分な演技をお願いしている。
女優さんは棺桶から出ると、まるでロボットのようにカクンカクンと動きながら、路上に脚を踏み出した。けいれんしたように体を揺さぶったり、両肩をあげて腕をプラプラさせたり、首が左右にずれたと思ったら、突然落ちたように演技したり蘇ったばかりの死体を演じる。
これには観客達も目を点にして見守っていたが、神埼くんは続ける。
「アマンダ・グッドハートさん。あなたは随分と酷いことをされたようですが、何が起こったのか覚えてますか?」
「ええ。忘れることが出来ません」女優さんは台詞を掃いた。
「お伺いしても?」
「思い出すと怖くなりますが、それで犯人が捕まるなら」
「そうですか。ならお伺いしましょう。あなたに何が起こったのか」
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