1・マジックショー演目

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 神埼くんが女優さんに話を始めると、女優さんは突然、顔に両手を当てて肩を震わせて、そして嗚咽まじりに身に起きたことを語る。  「あれは部活の帰りでした。背後から突然黒いバンがやって来て、ゴリラみたいに屈強な男が、私に袋を被せて担ぐと、バンに乗せて連れていっ たんです。私は何度も叫びました『助けてええっ! 助けてええっ!』」  女優さんの叫びに観客は表情を凍りつかせた。  「誰も助けてくれなかった、と?」  「はい。その後、廃屋になったモーテルで袋を取られると、スマホは破壊され、次ぎに手足をロープで縛られました。頑丈に縛られたのでもがけばもがく程手首が痛みました」  「なるほど。手首の痣はその時のものですね」  神埼くんは女優さんの手首を持つとマジマジと眺めた後、質問を続けた。  「屈強な男は私に卑猥なことをして来たので、抵抗すると、ぐうで殴られました。それでも私は必死にもがきながら助けを呼び続けました『誰か来てええっ! 早く誰か来てええっ!』」  「それで犯人は痺れを切らして、あなたを刺殺した」  「はい」女優さんは説明を終えると再び声を荒げて嗚咽を始めた。  「ご安心下さい。恐らく次の質問であなたを誘拐拉致した人物が誰なのか判るでしょう」神埼くんは女優さんにハンカチを手渡すと、泣き止むのを待ってから最後の質問に入る。  「ではお訊きします。あなたを誘拐した車のナンバーは言えますか?」
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